月へ・・・

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"We Choose The Moon" - John F. Kennedy Speech
























































ケネディは、アメリカが宇宙開発競争の先頭に立つことを熱望した。1957年にソ連はアメリカに先駆けて世界で最初の人工衛星スプートニクを打ち上げて地球の周回飛行に成功して、アメリカ国民に「スプートニクショック」と呼ばれる衝撃を与えた。アイゼンハワー大統領は翌1958年にそれまでの軍部によるロケット打ち上げを宇宙開発の名のもとに軍部と分離させてNASA(アメリカ航空宇宙局)を設立した。そして人間を宇宙空間に送り無事帰還させることを目標に「マーキュリー計画」を実行し7人の宇宙飛行士を育成していた。しかしその後1961年にソ連はガガーリン大佐を乗せてボストーク1号を打ち上げ初めて有人飛行で地球一周を成し遂げ、この時点ではアメリカはシェパード中佐やグリソム大尉を宇宙に送ったが、それは周回飛行ではなく大気圏外に15分程度滞在する程度の弾道飛行で宇宙開発については完全にアメリカはソ連に差をつけられた。「アメリカが宇宙開発競争で後れをとることはできない」と発言していたケネディは、1961年5月25日の上下両院合同会議の席で「10年以内にアメリカは人間を月に送り、無事帰還させる」と述べて、この壮大な計画(アポロ計画)を実行に移すために400億ドルと見積もられた巨額の予算の承認を議会に求めた。先に月に到達すればソ連に宇宙開発で勝利しアメリカ国民の自尊心と士気を高めそして国内経済を活性化させるとケネデイは信じていた。この演説直後のギャラップの世論調査では58%の国民が宇宙開発に反対であった。しかし宇宙開発に投じる費用は仕事を生み、雇用を生み、地域の発展にも繋がる。ケネディは「なぜ月へ10年で行くのか・・・。それがやさしいからでなく、難しいからだ。この目標が我々から最高の活力と技術を引き出すからだ。」と語った。1962年2月20日にそれまでに天候不順で2カ月も順延されたジョン・ハーシェル・グレン中佐の乗った「フレンドシップ7」がアメリカとしては初の地球周回飛行で地球を3周し4時間55分て帰還した。初めて宇宙を飛んだグレン中佐を招いてホワイトハウス南庭で開かれた表彰式で、勲章を授与する直前にケネディ大統領が誤って勲章を足元に落とし、そのときに「宇宙から帰って来たグレンに地上から上がった勲章を」とケネディが持ち前のウイットで参列者を笑いに包んだ場面はその後長く記憶されている。そしてカーペンター、シラーを経て1963年5月にゴードン・クーパーが22周34時間20分の宇宙滞在を記録した。宇宙開発が他の科学技術の発展に継がれ、また軍事的技術の発展を促すことを押さえたうえでこの計画の推進によって大きな利益を得ることになる大手軍事産業のロビー活動の後押しもあり、これを無事に通過させることに成功した。ケネディによって推進された宇宙開発は「マーキュリー計画」でまず地球を周回する軌道に乗せた後、ケネディの死後ジョンソン政権の下で1965年から「ジェミニ計画」で二人乗りの宇宙船ジェミニ号で長期間の地球周回飛行とドッキングやランデブー、そして船外活動を経験し、挫折もあったが1968年から「アポロ計画」で宇宙船アポロ号で地球の引力圏を離れて月を目指した。そしてニクソン政権に引き継がれ、1969年にアポロ11号はついに月面に人類を送り届けることに成功した。アポロ計画をはじめとする宇宙開発競争には、宇宙空間における探検や冒険、研究といった側面の他に、冷戦下においてソ連との間で宇宙空間の軍事的覇権を争う側面や大手軍事企業へ利益を与える側面もあった。ケネディが議会を通過させたアポロ計画をはじめとする宇宙開発競争が、ジョンソン政権下で拡大したベトナムへの軍事介入の拡大と併せて進んだ結果、マクドネル・ダグラスやノースロップ、ロッキードなどの軍産複合体の中心的存在である大手軍事産業は大きな利益を得た。しかし、同時にアポロ計画の莫大な開発費と、拡大するベトナム戦争による戦費支出の増加は、国家予算を圧迫して公共事業などへの投資の縮小をもたらし、また月へ到達した頃からアポロ計画の縮小で不況を後押しすることとなった。






ジョン・F・ケネディ大統領就任演説


米国連邦議会議事堂

ワシントンD.C.

1961年1月20日


ジョンソン副大統領、下院議長、最高裁判所長官、アイゼンハワー大統領、ニクソン副大統領、トルーマン大統領、聖職者諸賢、そして国民の皆さん。

今日のこの日を、政党の勝利ではなく、自由を讃える機会として祝福しましょう。これは終わりと始まりの象徴であり、再生と変革の兆しです。なぜなら、私が先ほど皆さんと全能の神の前で誓った言葉は、我々の父祖がおよそ175年前に定めた厳粛な誓いと同じものだからです。

世界は大きく様変わりしました。今日の我々は、あらゆる形の貧困を撲滅する力と、あらゆる形の人間の生命を根絶させる力の両方を、神ならぬこの手に持っています。しかしながら、かつて我々の父祖がそのために戦った革命的な信条、つまり、人間の権利は国家の寛大さによって与えられるものではなく、神から授けられたものであるという信条は、今もなお世界各地で争点となり続けています。

我々は、その最初の革命の継承者であることを忘れてはなりません。今このとき、この場所から、敵味方の区別なく、すべての人に伝えましょう。たいまつはアメリカの新しい世代に渡されました。20世紀に生まれ、戦争で鍛えられ、苦しく困難な平和に身を置き、古来の伝統に誇りを持つ我々は、人間の権利が徐々に奪われていくのを見過ごすことはできません。人権こそ、この国の変わらぬ関心の対象であり、今日の我々が国の内外を問わず力を注いでいるものです。

すべての国々に知らせましょう。アメリカに好意を持つ国にも、そうでない国にも。我々はあらゆる代償を支払い、あらゆる重荷を担い、あらゆる困難に耐え、すべての友を支え、自由の存続と繁栄を妨げるすべての敵と戦う覚悟であるということを。
我々はこれを固く誓います。そして、それだけにとどまりません。

文化的・精神的な源を共有する古くからの盟友に対し、我々は誠実な友として忠誠を誓います。団結しましょう。我々が何度も協力して取り組めば、できないことはないはずです。分裂していれば、できることはほとんどありません。対立し、ばらばらに分裂した状態では、難しい課題に立ち向かうこともできません。

これから新たに自由主義世界に迎える国々に対しては、植民地支配という1つの形が終わり、その代わりにもっと過酷な鉄の専制が始まるという事態にはならないことを約束します。我々の考えがいつも支持されるとは期待していません。ただ、彼らが自らの自由を強く求めること、そして、虎にまたがって権力を握ろうとする者は結局虎に喰われるという昔からの教訓を忘れないことを願っています。

世界の人口の半分を占める、集団的困窮から抜け出そうと懸命にもがいている人々に対しては、彼らの自助努力を支援すべく最大限の努力をすることを誓います。どれだけ長い期間かかるとしてもです。これは共産主義者がそうしているからでも、票集めを狙っているからでもなく、ただそれが正しいことだからです。もし自由な社会で多数の貧困者を救うことができなければ、少数の富裕者を救うこともできません。

国境の南に位置する同朋諸国に対しては、特別な誓いを立てましょう。有言実行を実践すべく、発展のための新しい同盟を結び、自由な民衆と自由な政府が貧困の連鎖から抜け出せるように尽力することを誓います。しかし、この平和的革命の希望が敵対勢力によって絶たれるようなことがあってはなりません。 すべての近隣諸国に伝えねばなりません。我々は南北アメリカ大陸のどこで侵略行為や政権転覆の企みがあったとしても、それに一致協力して対抗する心構えであるということを。そして、他の大国すべてに知らしめましょう。この大陸は自らの領土を自ら支配するのだということを。

世界中の主権国家の集まりである国連は、戦争の手段が平和の手段をはるかに凌駕しているこの時代において、最後に残された希望の光です。我々は国連をただの罵り合いの場にするのではなく、新しい国や弱い国の盾とするべく努め、国連憲章の及ぶ地域が増えるように力を尽くすことを改めて誓います。
最後に、我々に敵対する国家に対しては、誓約ではなく要請をしたいと思います。双方で新たに平和への道を進もうではないかと。科学によって解き放たれた破壊的な力が、意図的にせよ偶発的にせよ、人類を自滅に追い込む前に。

これは弱さからの要請ではありません。我々の軍備が十分であると確信しているからこそ、どうしても軍備を使用すべきでないと確信できるのです。

しかし現在のあり方では、二大陣営のどちらも安心することはできません。どちらの陣営も近代兵器の費用負担に苦しみ、核兵器の着実な拡散に恐れを抱きながらも、人類の最終戦争を食い止めている不安定な恐怖の均衡を崩そうと競争しているのです。

共に新しく始めようではありませんか。礼儀正しい振る舞いは弱さの証しではなく、誠実さは証明すべきものだということを共に心に

刻みながら。 恐怖ゆえに交渉してはなりません。しかし、交渉することを恐れてはなりません。

共に考えましょう。我々が団結できる問題は何かを。互いに意見の異なる問題にいつまでもこだわるのではなく。

共に作り上げましょう。兵器の査察と規制に関する初めての本格的かつ詳細な提言を。そして、他国を破壊できる絶対的な力を、すべての国々の絶対的な管理下に置きましょう。

共に努めましょう。科学の恐怖ではなく科学の素晴らしさを呼び覚ますために。互いに力を合わせ、宇宙を探査し、砂漠を征服し、病気を根絶し、深海を開発し、芸術と商業を奨励しましょう。

共に手を取りましょう。預言者イザヤが語った、「くびきの結び目をほどいて虐げられた人を解放し」という言葉が地球上のあらゆる場所で聞かれるように。

そして、もしも双方の協力を足がかりとして不信感を拭うことができたら、新たな勢力均衡を図る代わりに、共に新しい試みに取り組みましょう。それは、法に基づく新しい世界、つまり強い者が法を守り、弱い者が保護され、平和が維持されている世界を作ることです。

このすべてを、最初の100日間で達成することはできないでしょう。1000日でも難しいでしょうし、この在任期間中、あるいはこの地上に我々が生きている間には達成できないかもしれません。それでも、始めようではありませんか。

国民の皆さん、我々の進む道が最終的に成功するか失敗するかは、私自身よりも皆さんにかかっています。建国以来、アメリカの各世代の人々は国家への忠誠の証しとして召集を受けてきました。この召集に応えた若者たちの墓が世界各地に点在しています。

今、我々を召集するラッパが再び鳴り響いています。これは、武器を取れという合図ではありません。戦いの合図でもありません。ただ、我々は武器を用意し、陣容を整えておく必要があります。これは、長く先の見えない戦いの重荷を担えという呼びかけなのです。来る年も来る年も、希望をもって喜びとし、苦難を耐え忍びながら、人類共通の敵である虐政、貧困、病気、そして戦争そのものとの戦いを貫く覚悟が求められています。

これらの敵に対し、世界の東西南北にわたる大同盟を組んで当たり、すべての人の暮らしをいっそう実り豊かなものにすることはできないでしょうか。この歴史的な試みに、皆さんもご参加いただけないでしょうか。

世界の長い歴史の中で、自由が最大の危機に晒されているときに、それを守る役回りを与えられた世代というのは多くありません。私はこの責任を恐れず、喜んで受け入れます。おそらく皆さんも、この役目を他の誰かや他の世代に譲りたいとは思わないでしょう。我々がこの取り組みに注ぎ込む精力と信念、そして献身的な努力は、この国とこの国に奉仕する人々を明るく照らし、その情熱の光は世界を輝かせるはずです。

そして、同胞であるアメリカ市民の皆さん、国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。

また同胞である世界市民の皆さん、アメリカがあなたのために何をしてくれるかではなく、人類の自由のために共に何ができるかを考えようではありませんか。

最後に、アメリカ市民の皆さんも世界市民の皆さんも、どうぞ我々が皆さんに求めるのと同じ水準の熱意と犠牲を我々に求めてください。良心の喜びを唯一の確かな報酬とし、歴史が我々の行いに正しい審判を下してくれることを信じて、この愛する世界を導いていこうではありませんか。神の祝福とご加護を願いつつ、この地上で神の御業が真に我々のものになることを念じて。




アメリカの宇宙事業に関するライス大学での演説


ジョン・F・ケネディ大統領

場所:テキサス州、ヒューストン

日付:1962年9月12日


ピッツァー学長、ジョンソン副大統領、コナリー州知事、トーマス下院議員、ウィリー上院議員、ミラー下院議員、ウェブさん、ベルさん、研究者のみなさん、ご来賓およびご列席のみなさま、こんにちは。

名誉客員教授としてのお招きありがとうございます。初講義は手短なものにしますのでご安心ください。

今日のこの特別な機会に、この場に立てることを大変嬉しく思います。

知識の大学として有名なライス大学、進歩の都市として有名な都市ヒューストン、力強さで有名なテキサス州で、われわれは一堂に会しています。知識、進歩、力強さ――いずれもわたしたちが今必要としているものです。なぜなら今は、変化と挑戦の時であり、希望と恐怖の10年間であり、知識と無知の両方の時代だからです。われわれの知識が増えれば増えるほど、われわれの無知が明らかになっていきます。

科学者として世界に登場した人々の大半が、今の時代に生きて活躍しているという驚くべき事実があります。わが国の科学者の数は、国の人口増加率の3倍のペースで増加し、12年ごとに倍増しています。にもかかわらず、広大な未知の領域、未解決の問題、未達成の課題が、わたしたちの持てる知識のすべてをはるかに超えて、今なお大きく広がっています。

われわれがどれだけの道のりをどのような速さで進んできたか、完全に把握することは誰にもできません。しかしここではあえて、人類5万年の歴史をわずか半世紀に凝縮して考えてみましょう。最初の40年間についてはほとんど何も知られておらず、その期間の終わり頃に、発達した人類が動物の皮で体を覆うようになったことがわかっているだけです。そして約10年前に、人類は洞窟から出てほかの住処を作り始めたことになります。文字を書くこと、車輪のついた荷車を使うことを人類が知ったのは、わずか5年前です。キリスト教は2年前に始まりました。印刷技術は今年になって発明され、そして蒸気機関が新しい動力源として登場したのは、この50年間の人類の歴史の中では、わずか2か月前です。

ニュートンが重力の性質を研究しました。先月、電灯、電話、自動車、飛行機が登場しました。先週、ペニシリン、テレビ、原子力が開発されました。そしてもし今日、アメリカの新しい宇宙船が金星への飛行に成功すれば、今晩の真夜中前に星々に達することになります。

息をのむばかりのスピードです。こういったスピードにあっては、古い弊害が取り除かれると同時に新たな弊害が、新たな無知が、新たな問題や危険が生まれることは避けられません。宇宙への展望を切り開くことには、大きな成果だけでなく、必ずや大きな対価や困難がともなうでしょう。

ですから、しばらく現状に留まり時機を待つことを望む人々がいるのは当然です。しかし、このヒューストンは、このテキサス州は、このアメリカ合衆国という国は、同じ場所に留まって待ち、後ろを振り返るのが好きな人々によって建設されたのではありません。この国は、前進する人々によって勝ち取られました。宇宙もそうなるはずです。

ウイリアム・ブラッドフォードは、1630年に、プリマス湾植民地の開拓について「偉大な名誉ある行動には大きな困難が伴う。そしてこうした偉業は責任ある勇気によってのみ達成されるだろう」と述べました。

もし、この時間を縮めた人類の進歩の歴史から何かを学ぶとしたら、それは、知識と進歩を希求する人間の行動は断固たるもので、誰もそれを押しとどめることはできない、ということです。アメリカの参加、不参加にかかわらず、宇宙探査は前に進み続けるでしょう。宇宙探査は史上類を見ない偉大な冒険です。他国のリーダーになることが期待される国であるならば、宇宙開発競争で後れをとることは許されません。

父祖たちのおかげで、この国は、産業革命、近代発明、核戦力のそれぞれの最初の波を乗りこなしました。そして今、宇宙時代の到来を迎えたわれわれの世代も、引き波の中で溺れるつもりはありません。われわれには新しい時代の一員となり、新しい時代をリードする意志があります。なぜなら、世界中の目が宇宙、月、そして彼方の星々に向けられている今、自由と平和の旗印ではなく、敵意ある征服の旗印で宇宙が埋め尽くされることは決して認めないと、われわれは誓ったからです。知識と理解のための道具ではなく、大量破壊のための兵器で宇宙が覆いつくされることは決して認めないと誓ったからです。

しかし、こうしたわれわれの誓いは、この国が先頭に立たない限り実現できません。ゆえにわれわれは必ず先頭に立ちます。科学と産業におけるアメリカのリーダーシップ、平和と安全に対するアメリカの願い、この国自身と他国に対するアメリカの責任、それらすべてが、われわれをこの努力に向かわせます。宇宙の神秘を探求して全人類の幸福のために解き明かし、世界をリードする宇宙旅行大国となることをわれわれに求めます。

そこに獲得すべき新たな知識と勝ち取るべき権利があるから、われわれはこの新しい海原に漕ぎ出します。そこにある知識や権利は、全人類の発展のために勝ち取られ、利用されなければなりません。原子物理学や他のあらゆる技術と同じように、宇宙科学そのものに道義はありません。宇宙科学が善と悪どちらの力となるかは、人類次第なのです。そして、この新しい海が平安の海となるか戦争の恐怖の舞台となるか、その決定にわれわれが参加することができるのは、アメリカ合衆国が卓越した立場を勝ち得た場合だけなのです。わたしは、宇宙の敵意ある悪用に対して、わが国が無防備でいるべきだ、あるいは無防備でいるつもりだと言うのではありません。陸地や海の敵意ある悪用に対して無防備でいるべきではないのと同じです。わたしが言いたいのは、宇宙の探索と支配は、戦争の業火を燃え上がらせることなく、人類がこの地球を手に入れるにあたって犯してきた過ちを繰り返すことなく、実現できるはずだということです。

まだ宇宙には、争いも偏見も国益の衝突もありません。宇宙に潜む危険は人類すべてにとっての危険です。宇宙の征服は全人類がすべての力を結集して挑むべき事業であり、宇宙での平和的な協力の機会は今を逃せば二度と訪れないかもしれません。しかし、一部の人たちは言います。なぜ月なのか、と。なぜ月を目的地に選ぶ必要があるのでしょうか。彼らはあるいは、同じようにこう尋ねるかもしれません。なぜもっとも高い山に登る必要があるのか。35年前、なぜ大西洋を飛行機で横断する必要があったのか。なぜライス大学はテキサス大学で試合をする必要があるのか。

われわれは月へ行くことを選びます。この10年のうちに月へ行くことを選び、そのほかの目標を成し遂げることを選びます。われわれがそれを選ぶのは、たやすいからではなく、困難だからです。この目標が、われわれの能力と技術のもっとも優れた部分を集め、その真価を測るに足りる目標だからです。この挑戦が、われわれが進んで受け入れるものであり、先延ばしにすることを望まないものであり、われわれが、そして他の国々が、必ず勝ち取ろうとするものだからです。

このような理由から、昨年わたしが下した宇宙開発を促進する決断は、大統領就任以来、もっとも重要な決断のひとつだと考えます。

昨日から、人類史上もっとも偉大にして高度な探検を行うために建設された施設を見学しました。サターンC-1ロケットの実験を見たときには、地面が揺れ、空気が震えるのを感じました。サターンC-1ロケットは、ジョン・グレン宇宙飛行士を乗せて飛んだアトラス宇宙船の何倍もの威力があり、1万台の自動車のアクセルペダルを同時に踏み込んだときと同じ馬力を出せます。5台のF-1ロケットエンジンを組み合わせて、最新のサターンミサイルを開発する現場も見学しました。1つのF-1ロケットエンジンで、サターンの8つのエンジンに相当する威力があります。こうした開発は、ケープ・カナベラルに建設された、高さが48階建ての建物と同じで、幅が1市街区分、長さがこの会場の2倍もある新しいビルで行われています。

この19か月の間に少なくとも45基以上の人工衛星が打ち上げられ、地球を回っています。そのうちの40基がアメリカ合衆国製です。わが国の人工衛星は、ソ連の人工衛星よりもはるかに精密であり、はるかに多くの情報を世界の人々に届けています。

現在、金星に向かっているマリナー宇宙船は、宇宙科学史上もっとも精緻な装置です。きわめて正確に方角を定めて、この宇宙船は発射されました。その精度は、ケープ・カナベラルでミサイルを発射して、このライス・スタジアムの40ヤードラインの中に落とせるほどです。

トランシット衛星は、船舶の安全な航海を助けています。タイロス観測衛星は、ハリケーンや暴風雨に関するさまざまな警報を初めて提供する衛星となり、今後は、森林火災や氷山についても同様の警報を提供する予定です。
われわれは失敗もしています。しかし他の国も、認めようとしなかったり、公にしようとしないかもしれませんが、同様に失敗しています。

たしかに、われわれは後れを取っています。有人飛行については、しばらく同じ状態が続くでしょう。しかし、いつまでも後れを取るつもりはありません。この10年のうちにわれわれは後れを取り戻し、さらに先へ進みます。

わが国の科学と教育の発展をさらに豊かで充実したものにするのは、宇宙や環境についての新しい知識であり、学習、地図作成、観察のための新技術であり、産業、医療、家庭、学校で活用できる新しい道具やコンピューターです。ライス大学のような高等教育機関は、こうした発展の恩恵を受けるでしょう。

最後に、宇宙開発事業そのものは、まだ初期の段階にありますが、すでに多数の新しい企業と雇用を生み出しています。宇宙とその関連産業では、投資と専門的な人材に対する需要が高まっています。ヒューストン、テキサス州およびこの地域は、そうした成長の恩恵を広く受けるでしょう。西部開拓時代に最辺境の開拓地であった場所が、科学技術と宇宙開発の最前線になるのです。有人宇宙船センターが建設されたヒューストンは、一大科学技術工学コミュニティーの中心になるでしょう。今後5年間で、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、この地域の科学者と技術者の数を倍増し、人件費などの出費を年間6000万ドルに増やします。工場や研究施設に2億ドルを投資し、ヒューストンの有人宇宙船センターから10億ドル以上の宇宙関連下請け事業を発注します。

たしかに、大きな経済的負担がわれわれの肩にかかります。今年度の宇宙事業予算は、1961年1月時の3倍、過去8年間の予算を合計した額よりも多くなりました。年間予算は54億ドルという驚くべき額ですが、これはアメリカ国内でのタバコと葉巻の年間購入額よりも若干少ない金額でもあります。近いうちに宇宙事業費は、国民1人あたり毎週40セントの出費に相当する金額から、毎週50セントの出費に相当する金額に増えるでしょう。なぜなら宇宙事業は最優先の国家事業だからです。一方、どのような成果を得られるか定かではありませんから、宇宙事業はある程度、信念と夢に基づく行為だとわたしは考えます。しかし、アメリカのみなさん、もしわたしが、ヒューストンの宇宙センターで巨大なロケットを打ち上げ、どのくらい巨大かと言いますと、高さ90メートル、全長はこのスタジアムと同じで、従来の合金の数倍の耐熱性と強度を備え、一部の素材はこれから開発される最新の合金で作られ、精密な腕時計よりも精巧に組み上げられ、推進、方向転換、制御、通信用の装置と食料、非常時用品を乗せた巨大なロケットですが、そのロケットを、先例のないミッションとして、地球から38万キロメートル離れた未知の天体である月に送る、とわたしが言うとしたら、そして、そのロケットを、時速4万キロで地球の大気圏に再突入させ、太陽の温度の約半分という異常な高温になったロケットを、たぶん今日のこの会場の暑さと同じくらいだと思いますが、そのロケットを安全に地球に返すのだ、とわたしが言うとしたら、この10年のうちにこのすべてを人類史上、初めて成功させるのだ、とわたしが言うとしたら、われわれは大胆に覚悟しなければなりません。

わたしがひとりでしゃべり続けますから、みなさんは、もうしばらく涼しそうな顔で座っていてください。[笑]

相当な覚悟が必要ですが、われわれはこれを実行すると、わたしは思います。必要な出費はすべきです。お金を無駄にすべきではありませんが、しかし、われわれはこの仕事を遂行すべきです。そしてこの仕事は、60年代のうちに遂行されるでしょう。そのとき、みなさんの何人かは、まだこの学校で勉強しているかもしれません。今、この演壇に座っている方の何人かは在任中でしょう。しかし、この仕事は必ず遂行されます。それも60年代が終わる前に。

わたしは、「人類を月に送る」というアメリカ合衆国の偉大な国家事業に本校が協力していることを喜ばしく思います。

エベレストで命を落とした、イギリスの偉大な登山家のジョージ・マロリー氏は、「なぜ山に登るのか」という質問に対して、「そこに山があるからだ」と答えました。 そのとおりです。そこに宇宙があるから、われわれは登ります。月と惑星がそこにあります。そして、知識と平和への新しい希望もそこにあります。それゆえ、われわれが船出をするとき、人類史上もっとも多くの危険をともなう、冒険的で偉大な壮途に神の祝福のあらんことを願います。

ご静聴ありがとうございました。














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