永遠の夢に向かって『バッド・ロマンス』

 

『バッド・ロマンス』

『バッド・ロマンス』

















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Lady GaGa レディー・ガガ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN







































芸能人がデビューする時には破竹の勢いを感じさせることが多い。Lady GAGAのデビューもそうだった。アーチストは数年間に渡って自分のスタイルを磨き続けるわけだが、そんなことは知らないリスナーの前に、マスメディアによって突然それが大きく紹介され始めた時の衝撃は大きい。2008年にGAGAのファーストアルバム『ザ・フェイム』が発売された時は、またへんてこりんなアーチストが登場したなぁというくらいの感じだった。しかし2009年のセカンドアルバム『ザ・モンスター』には本当に驚いた。このアーチストは正気なのだろうか、そもそも人間なのだろうかと、ふと感じさせるようなところがあった。アメリカン・ポップスの魅力はとてつもなく豪華なステージと完璧なショーにある。『スリラー』から『バッド』の時代のマイケル・ジャクソンをリアルタイムで知っている人には説明の必要はないが、彼のパフォーマンスは一瞬神を感じさせた。この人は重力から解き放たれているのではないかと思わせる軽やかさだった。下着姿で歌うマドンナにも驚いたが、それが決して猥雑にならないのは、バックダンサーたちと完璧にシンクロした見事なダンスと煌びやかなステージセットのおかけだった。もちろんホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリーといった、尋常な声量ではない正統派の歌手もアメリカには多い。しかしアメリカン・ポップスの華は、やはりバックダンサーたちを引き連れ豪華なセットの前で歌うマイケル・ジャクソンやマドンナタイプのアーチストだろう。ただ1990年代から2000年紀にかけてのアメリカン・ポップスは、ちょっとスランプだった。アヴリル・ラヴィーンの楽曲は魅力的だが、元気のいいお姉ちゃんという感じで、このタイプならヨーロッパにも日本にもいるなと思った。次代のアメリカン・ポップ・スターと目されたのはブリトニー・スピアーズだが、マイケル・ジャクソンやマドンナに比べると歌もステージングも粗かった。ブリトニーはとても愛されているが、それはアメリカ人にしか関わりのないローカルな理由からだと思う。一言でいうと、アメリカン・ポップスもいよいよ翳って来たかという雰囲気だったのである。GAGAのデビューはそんな杞憂を吹き飛ばしたが、それは従来のアメリカン・ポップスの伝統をさらに先鋭にしたものだった。映像と音楽の世界では、金をかければかけるほど良い作品ができあがる傾向がある(それが大コケして倒産などを引き起こすこともある)。GAGAは『ザ・フェイム』でスターダムにのしあがったが、そこで得た利益を惜しげもなく次作につぎ込んだようだ。プロモーションビデオに金をかけ、ツアーステージに膨大な金をかけた。妙な言い方かもしれないが、その資本主義世界ならではの豪華さは僕らの度肝を抜いた。あれは世界をマーケットにするスター以外には決してできない。アメリカは良くも悪くも消費の国である。その蕩尽の驚くべき規模、見事さは、アメリカ人でない僕らにさえある種のカタルシスを与えてくれる。簡単な英語だがとても訳しにくいので原文のまま掲載した。〝bad romance〟は直訳すれば「悪い恋愛」だが、「最悪の結末が見えている恋愛」、「どうせ悲惨な終わり方になる恋愛」といったニュアンスである。それでも主人公の女性は「bad romanceの虜」(Caught in a bad romance)なのであり、それは「あなたの醜さが欲しい/病んだあなたが欲しい」(I want your ugly/I want your disease)という歌詞でも表現されている。ストレートなラブソングでないことは言うまでもないが、破滅や堕落指向を歌った曲とも違うように思う。男女の間に確かに存在するが、なかなか表現しにくい、最初から不協和音としてしか成立し得ない恋愛感情を描いた楽曲ではないだろうか。GAGAの『Bad Romance』と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは〝Ra ra-ah-ah-ah/Roma Roma-ma/Gaga Oh-la-la/Want your bad romance〟という奇妙なリフレーンだろう。強いて解釈すれば、〝Roma〟にはロマンスとジプシーとして知られるロマ族の二つの意味(イメージ)が掛けられているはずである。いずれにせよこのリフレーンが『Bad Romance』という曲を規定している。不協和音を感じさせるメロディーに乗った無意味な言葉の連なりが続き、最後にテーマ(Want your bad romance)が明かされる。Lady GAGAが芸名に選んだGAGAには雑音・騒音といった意味がある。『Bad Romance』のクレジットは作詞・作曲 Lady GAGA & RedOneになっている。誰がどの部分を担当したのかはわからないが、〝Ra ra-ah-ah-ah/Roma Roma-ma/Gaga Oh-la-la〟というリフレーンを誰が書いたのか、とても興味がある。GAGAは奇抜なファッションや言動でアートスクール時代にいじめにあったと告白している。しかしショービズ業界の大人には彼女は金の卵に映った。やがてそれがGAGA HAUSと呼ばれるブレーン集団を形作っていくことになるわけだが、プロデューサーのRedOneもその一人である。GAGAはメジャーデビュー前に、本名のステファニーでピアノの弾き語りパフォーマンスを行っている。その映像を見る限り現在のLady GAGAの面影はない。またあえて言えば素のGAGAにそれほどのスター性はないと思う。飛びきりの美人ではないしモデルのようなスタイルをしているわけでもない。声量もテクニックもあるが、シンディ・ローパーやフレディ・マーキュリーのように一度聞いたら忘れられない特徴的な声を持っているわけでもない。「ステファニー、今のままじゃ売れないよ」というプロデューサーたちの声が聞こえてきそうな感じのアマチュア時代だ。GAGAはライブでレコーディング曲を、しばしばピアノの弾き語りで歌っている。それを聴いていると、彼女が作った曲の多くが最初はスローテンポのバラードだったことがわかる。『Bad Romance』もそのような曲の一つだろう。それをRedOneを始めとするブレーンたちが、ラップやヒップポップ調にアレンジしたのだろう。またGAGAにはブレーンたちが何を要求しているのかを、正確に理解できるだけの知性とセンスがあったのだと思う。反社会的ともいえる過激さと、それとは反対に実に保守的な位相に揺り戻ってしまうような資質をGAGAは持っているように思う。『Bad Romance』のサビの部分の歌詞は、〝I want your love/And I want your revenge/You and me could write a bad romance〟(あなたの愛が欲しい/そしてあなたに復讐されたい/あなたとわたしならいいbad romanceが書けるわ)である。〝could write〟としたところがGAGAの面白さだろう。実体験に基づいているかどうかは別として、〝bad romance〟は書かれるべき一つのフィクションである。醒めた心で男を引きずり込み自分もまた傷つくが、それでも「いいbad romanceが書けるわ」と歌っている。それはどこかでフィクショナルなGAGAというポップ・スターの存在に重なっている。正直に言えば、『ボーン・ディス・ウェイ』以降のGAGAはあまり面白くない。いじめや同性愛、貧困問題のオピニオンリーダーとしても活躍し、社会的名士にもなりつつある。その反面、デビュー当時のGAGAが持っていた謎めいた雰囲気が急速に失われつつある。異星人やアンドロイドから人間に戻ってしまったかのようだ。しかしGAGAはマドンナのような鉄の女ではない。彼女には常に危うい揺らぎが見え隠れする。だがそれもまたLady GAGAの魅力なのだろうと思う。















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